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LIFE STYLE

軽井沢が初めての方も、リピートしているお馴染みの方も、軽井沢を訪ね歩くとき不思議な感覚を抱く瞬間があることに気付くと思います。森の中で、特に。避暑地文化に端を発した軽井沢は、文化人や芸術家などが好んで夏を過ごし、その多様な人々の交流から生まれた文化の土壌が豊かさを育み根付いてきました。
昭和・平成・令和と時が流れても、著名な大学の多くが寮を構え続け、企業にあっても研修の地をここに置くなど人的交流が盛んに行なわれてきました。この特異な地の利は、芸術や文化面に携わる人たちに長く好まれてきたのです。豊かな文化を育んできたこの地ですが、時代の変遷とともに観光重視の方針の一方で、多くの樹木伐採がなされ変化が否応なく生じました。変わらざるを得ない軽井沢においても、遠くなく訪れる未来を模索し、色々な側面の「まちづくり」を課題に据えて毎年開催している、国際都市整備機構(FIACS)が去る9月12日に開催したシンポジウムをリポートします。

今年のテーマは「コロナ状況下における軽井沢の芸術文化」。軽井沢で活躍するアーティストのオンラインシンポジウム参加をはじめ、建築家で軽井沢町の景観アドバイザーにも就任した青山学院大学教授 團紀彦さんと、新進気鋭のアーティスとしてその存在感を揺るがないものにしている小松美羽さんとの対談という、アーティスト活動の現状やコロナ後のことを語り合う場となりました。
今年は「コロナ」という感染症に、全世界が日常を覆されました。日本でも、医療現場の混乱にはじまり、営業できない店、仕事を無くす人など当たり前の日々すら送れない毎日に、誰もが混乱し疑心暗鬼にすらなりました。必要不可欠な“衣食住“さえ死守できない人がいる状況下で、芸術や文化活動といった「生きる」ことに直結しないコンテンツに携わる人たちは、どれほど所在が無かったことでしょう。
この国際文化都市整備機構(FIACS)のシンポジウムは、軽井沢に縁のある文化人や企業人、政治家の方たちが、地元の皆さんと共に明日の軽井沢を考えようとはじめたものです。近年、軽井沢には全寮制の国際高校(UWC ISAK)ができ、今年は新しい教育現場として全国から注目を集める幼・小・中の一環校(風越学園)も開校したことで、子どもを持つ親たちにとって住みたい町になりつつあります。自然に恵まれていることや、首都圏にも近いことに加え、先に述べたように芸術文化への造詣も深く有益な刺激に恵まれています。
宣教師が見出した避暑地軽井沢が更なる発展を遂げるために、芸術文化がどうあるべきで、今後どうしていけば町の未来により良い影響をもたらすかを考える機会を提供したシンポジウムでした。シンポジウムの最初に登場したのは、地元の声を聞かせてくれたNPO法人「愛宕山てっぺんの森を守る会」理事長の加藤正文さん。コロナによって森を守るボランティア活動の中止を余儀なくされたこと、しかしながら自粛中に思い及んだのは、町に必要な若いエネルギーを終結させるには魅力ある学びの場をつくることが望ましいなどが話されました。
また軽井沢で芸術活動をしているディビッド・スタンリー・ヒューエットさんは、アメリカからの移住の経緯や軽井沢の美しさ、コロナにおいてもできる活動を続けたことなどを熱く語りました。ヒューエットさんは、海外でも個展を開くなど積極的に活動しています。もう一人のアーティストはタムラエイジさん。犬をビビットな色彩で描く人気作家で、軽井沢プリンスのスキー場に大きな作品が描かれています。是非、スキーを楽しむ際にご覧ください。

メインゲストが登場した対談は、セゾン美術館で開催中の「都市は自然」展のゲスト・キュレーターでセゾン現代美術館の理事でもある建築家の團紀彦さんと、テレビで見かける機会も多い画家の小松美羽さんのお二人で繰り広げられました。團さんからは、展覧会の意図や、ペストなど様々な疫病の歴史も語られて、コロナを生きる知恵など引き込まれるリポートが披露されました。團さんの話を受けて対談で小松さんは、昨年ベネチアビエンナーレに参加して感じたことのほか、コロナ下での作家活動など神々の話を交えながら語ってくれました。
信州は県土の約8割が森林です。森をつくる長い歴史を持つ樹々が、この地には多くあります。霊験あらたかと言いますが、軽井沢の高原地もその例に漏れず、やはりパワーがあるのでしょうか。文化人や芸術を嗜む人々が好んで集まる地となっています。冷涼な森を歩くとき、その力を感じる人もいると思います。コロナは万人に平等に不自由を強いてきました。不自由の中にも心の豊かさを忘れず活動に取り組んだアーティストや専門家の人たちの話は、新しい明日への道標にもなりました。アーティストの皆さんが一層活躍できる日常、普通に暮らす人たちが不安なく過ごせる日常、当たり前の大事さを考えたシンポジウムでした。
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